猛烈な熱さも香りのために

『温度が高すぎた!もっと弱めなきゃ!!』
『今度は低すぎた!!』
『それにしても、部屋が熱すぎる!!』
そりゃあ、みんな炭火仕上げを辞めた訳だ・・・
当園が2008年より挑戦しているのが、備長炭による炭火仕上げです。
天然の遠赤外線による上品な香り。これを求めての挑戦です。
製茶の最終工程を仕上げと呼びます。この仕上げは加熱処理を行うことにより、茶の水分を調整し、保存性を高めるとともに香気や 旨味を引き立たせるのです。
現在、仕上げの加熱処理には、一般的にガスを使っています。
ガスが普及する前は炭が使われていました。しかし、炭による仕上げは当然、安定しません。天然の燃料は、火の調整が極度に難しい。おまけに極端に暑い。。。だからこそ、昭和初期より、川根でもガス仕上げが普及したのです。
そんな炭火仕上げに、なぜ今さら私たちは挑戦するのでしょうか。
お茶業者も高齢化しています。 後継者も慢性的に不足。そんななか、親戚のお茶屋さんが高齢により廃業することになりました。そこで当園が、お客さんを引き継ぐことになりました。
このお茶屋さんが仕上げていたのが、備長炭による炭火仕上げのお茶。このお茶を頂いてみてビックリ。
『香りが、ガスと違う!』
遠赤外線の効果でしょうか。
さっそく備長炭の炭火仕上げに挑戦してみたものの、すぐに真似できません。
炭火仕上げは、原料のお茶の状態を選ぶことももちろんですが、火の調整を常にカンに頼らなければいけません。猛烈に熱くなるので体力も必要です。
なんとしてでも、あの味と香りを再現したい!この頃は『はじめはビックリしたけど、クセになった』と評判です。
いつかは当園の最高級茶までこの炭火仕上げができるようになれば、と思っております。

炭火仕上げの効果とは?
炭火の熱源でお茶を焙煎すると、2つの効果が期待されます。
【遠赤外線効果】
炭火から放射される遠赤外線は、和紙の上に当たってその熱が均等に分散されます。これにより、遠赤外線がお茶に直接吸収されます。遠赤外線は熱を均一に伝えるため、お茶の中まで熱がいきわたり、一様な焙煎が行われることが期待され、これによって茶葉の風味や香りが高まります。
【炭酸ガス効果】
炭火を使って焙煎すると、茶葉の中に含まれている水分や葉の表面にある水分が蒸発し、葉が乾燥します。この過程で、炭火の熱による乾燥や茶葉内部の炭酸ガスの発生によって、お茶の抽出に、より効果的な揮発成分の抽出が行われ、香りや味わいが向上することが期待されます。
これらの効果は、炭火の熱源を使った伝統的なお茶焙煎の方法で特に重要な役割を果たします。和紙の上で焙煎することにより、茶葉の風味や香りのバランスが良くなり、美味しいお茶が楽しめるようになるのです。